このサイトは、ドメインでわかるようにさくらインターネットのレンタルサーバーです。誰かの役に立つことがあるかもしれないからという程度の気持ちで作ったごく小さなサイトなので本当はもっと簡易な小さな容量のサーバーで十分なのですが、ちょうど手持ちで借りていたサーバーがあってそこに入れたのでちょっと分不相応なところに収まっています。
一方、たとえサイトが小規模であっても、(SEO的な解析は不要でも)ページやファイル単位でのダウンロード数を知りたいとか不審なアクセスを追えるようにはしておきたい、という場合はあると思います。
この要求を比較的気軽に満たしてくれるアクセス解析ツールで筆者が便利だと思っているのはTHK Analysis(作者:「るな」さん)で、自分のサーバー上で動作しますし、無償で使わせていただけますし、機能的にも必要十分で断然お勧めできるものです。もちろん、多数のアクセスがあるサイトに対しても全体傾向を分析して図表化する機能を備えているのでSEO的な解析にも役立つと思います。
ただTHK AnalysisはデータベースとしてMySQLかMariaDBのどちらかが必要です。ですからたとえばさくらインターネットの場合でいえば、ライトプランで契約している場合は不可ということになります。またTHK Analysisは各ページに解析用コード(解析用タグ)を貼り付けてアクセス情報を収集するタイプなので、ファイルのダウンロード数を知りたい場合は一工夫必要になりますし、不審なアクセスの詳細まですべて追えるというものではありません。
そして、DBが使えないとかアクセスを詳細に確認したいという場合はサーバーのHTTPアクセスログ(生ログ)が必要になるわけですが、これはそのままでは詳細すぎて内容がつかみ難いですから、多少なりとも読みやすくしてくれるツールが必要です。しかし探してみるとこれが実に意外なほどなくて、特にさくらのサーバーの場合はなおのことで、思いのほかあれこれ調べることになりました。そのプロセスを書いたのがここから先の内容です。マルチドメインが可能なサーバーを使っている方には参考になる部分があるかもしれません。
さくらのWebサーバーはApacheだそうで、アクセスログは項目が半角スペースで区切られたテキストファイルで出てくるため、とりあえずテキストエディタ以外で使えそうな手近なツールがあるとしたら表計算ソフトかCSVエディタだろうと思います。しかしやってみると次のようなところで、あまりよい結果にはなりませんでした。
そこで次にHTTPアクセスログの閲覧に特化したソフトはないかと探すと、すぐに「ApacheLogViewer」(作者:「Circle」さん)というツールが見つかりました(Vectorの配布ページ)。これは古くからある有名なもののようで今でも多く関連記事が見つかりますが、最新バージョンでも2004年公開で20年前のものであり、作者のオリジナルサイトもすでにありません。ただそうは言ってもWin10でも特に不都合は感じませんし、UIは無駄がなく合理的で、長く使われているのが頷けるシンプルな良いソフトです。
しかしながら、ApacheLogViewerには任意の文字列による絞り込み(フィルタリング)機能がないようで、Statisticsボタンから開く別ウィンドウではある程度絞り込んだリストにできますが、純粋な閲覧のためのアクセスだけを手早く見たいというような場合には少し煩雑に感じます。
加えて、さくらのレンタルサーバーでアクセスログに「ホスト名の情報」を加える設定(※)をした場合、ApacheLogViewerでは、この形をそのまま扱えるオプションがないために表示上ちょっとした不都合が起こります。
さくらのレンタルサーバーのアクセスログの形式は、公式サイトの説明を見ると基本的に「NCSA extended/combined」(これはApacheLogViewerで対応)と呼ばれるものと同じに見えますが、「ホスト名の情報を残す」(※)を「保存する」にすると、先頭に「アクセス先ドメイン名」が挿入されるようです。
(※: この設定は特に、マルチドメインにしていて、どのドメインに対するアクセスなのかがわかるようにしたい場合に有用だと思います。設定はサーバーコントロールパネルの、「サーバーステータス」>「アクセスログ」にあります。)
そしてApacheLogViewerで「アクセス先ドメイン名」が挿入された形式のファイルを読み込むと、エラーにはなりませんが、RemoteIPの列にドメイン名が、Serverの列にリモートホストが表示されて、結果的にこれらの項目で絞り込みができないので、使い勝手が悪くなってしまいます。
さて、ここで、実際に筆者が取得しているさくらのサーバーのアクセスログ(「ホスト名の情報を残す」はON)を調べると、次のようなフォーマットになっていることがわかります。
"%v %h %l %u %t \"%r\" %>s %b \"%{Referer}i\" \"%{User-Agent}i\""
(フォーマット文字列は「Apache モジュール mod_log_config」に従いました。)
一方、ApacheLogViewerが対応している、標準的な「NCSA extended/combined」書式は、次の形式です。
"%h %l %u %t \"%r\" %>s %b \"%{Referer}i\" \"%{User-Agent}i\""
比べると確かに、さくらのログではNCSA extended/combinedフォーマットの先頭に%v(ホスト名・アクセス先ドメイン名)が挿入された形になっています。
また、こちらのサイトさん(「Just another memorandum」)によるとエックスサーバーのアクセスログも同じ形式だそうですので、ほかにも同じ形式を使っているサーバーは結構あるのだろうと思います。
この点について、ApacheLogViewerのReadmeの説明では、「VirtualHostを運用している場合は、%l 記述を %v 記述に修正すればより便利にログを閲覧することができる」とあります。しかしそれにはサーバー側の設定(httpd.conf?)を変えなくてはならず、しかもいろいろな方のサイトを読んでいるとさくらのサーバーでこの設定変更はVPS以外では許可されていないとわかります。
まあ一つのやり方としては、サーバーからダウンロードした後にExcelか何かで第1列の %v の値を第3列の %l のところに上書きすればよいでしょうが、面倒です。そこで筆者自身はローカルアプリとして上記のApacheLogViewerのReadmeと同じ変換を行うツールを作って自分で使っています。もしかしたらそのうちここで公開するかもしれませんが、他の方の使用に堪えるものなのかどうかは自信がないので、今はまだどこにも公開していません。
次に、「Log Parser Studio」も試してみました。このソフトはマイクロソフトが公開している汎用のログ解析ツールで、説明にはイベントログやXML形式なども解析できるとあり、apacheのログ解析に利用する方もあるようです。ところがこのツールではSQL文を書く必要があって、慣れていないと躓きます。のみならず、ただログファイルを開いて眺めるという程度でもちょっとした手間がかかりましたので、最初に書いた手軽な日常的な確認にはやっぱり不向きでした。
なおLog Parser Studioを試したい方は次のサイトが参考になります。
「ApacheのアクセスログをLog Parser Studioで解析してみた」
Log Parser Studioを使うには、先にLog Parser(CUIツール)をインストールする必要があります。
Log Parser2.2日本語版(Microsoftのサイト)
Log Parser Studioについては次のページで、説明文の最初の方にダウンロードリンクがあります。
IISログおよびLog Parser Studioレポート(Microsoftのサイト)
そこで次には英語圏の情報も探してみました。そうすると「Http Logs Viewer」(https://www.apacheviewer.com/)というソフトが目に入りましたが、結構漁ってみても本当に意外なほどこの種のソフトでめぼしいものは見つかりませんでした。
「Http Logs Viewer」は、ヨーロッパの島国、マルタのIannetという会社の製品だそうです。以前は「Apache Logs Viewer」という名前だったとあり、旧名称はさっきご紹介したCircleさんのソフトとそっくりですが、こちらは「Logs」と複数形です。UI・配布サイトとも英語のみで、現状日本ではただ1件、さきほど挙げたサイト「Just another memorandum」の方が言及しているだけです。
このソフトは、インストールすると最初は機能制限のある無償版として動作し、解除キー(20ユーロ)を購入するとロックされていた機能が使えるようになります。無償版の状態でも使用期限はないようですが、しかし機能は基本的な閲覧関連に限られ、絞り込み対象もリモートホストやステータスのみに限定されていて日付の絞り込みさえ不可で、集計・図表化機能の大半は使用できないので、簡単なビューアーという程度での動作になります。
一方で次のようなところは魅力的だったので筆者は解除キーを購入しました。
そのほか、購入するといろいろな集計・図表化機能なども使えるようになります。
さて、良い点としては次のような部分が特筆できます。
また必要ならば、結構多くの集計・図表化機能もメニューに並んでいます。
ただ一方でこのソフトは全体的に「気が利かない」という感じの作り込みの浅さが目立ち、それが使用感を損なっています。たとえば次のような点です。
このうちのいくつかは、フォーラム(公式サイトからリンク)で機能改善の提案がされていたのですが、積極的に提案が採用されている感じはなく、そのうちフォーラムへのリンクもいつの間にかなくなってしまいました。現在のバージョン(v6.23)でさえ使いやすいと手放しで賞賛できるような部分はわずかなので、改善は残念ながら今後もあまり期待できない印象です。
それと、起動が完了するとともに、先に開いていたウィンドウの下に隠れてしまうという面白い仕様があります。まあこれは先にエクスプローラーが開いてあった場合ファイルをドラッグ・ドロップで開くには都合が良いのですが、しかしそうするともう一つ起動してスプラッシュウィンドウがログ形式選択ウィンドウに被ってしまい、しかもその選択が完了するまでスプラッシュウィンドウが消えない(選択ウィンドウをドラッグしてずらし設定する必要がある)状況になり、ここでも特有の作り込みの浅さが露呈してしまいます。
さて、その後ある時、古いランタイムを整理したら動作しなくなってしまいました。それで、改めてその指定バージョン(Microsoft .NET Framework 4.5以上)はもちろん、整理してしまった古いバージョンやこのソフトの本体の再インストールなども試みたのですが、さっぱり復旧しません。それでサポートに問い合わせしたのですが、1回は返事が来たものの結局わからないようで、なんと後はそれっきりでした。ですから、はっきり言ってちょっとお勧めはできません。筆者ももう放棄してしまったような状態です。
というわけでいろいろ良い点不便な点変な点のあるソフトですが、他にあまり見つからない種類のものなので一応書いておきました。
以上、どなたかのご参考になれば幸いです。
Copyright © 2024- ryszy